ハードルが高い農地の遺贈

田と畑を所有し、ご自分で耕作されている方から、「息子たちは農業に全く関心がないので、農作業を手伝ってくれている孫に、農地を譲りたい」との相談を受けました。

相続財産の中から特定の物だけを遺贈することを、特定遺贈といいます。農地を特定遺贈により所有権移転登記するためには、農地法の許可を得ることが必要となります。そして、その許可を得るための条件の一つに、取得する人が所有する農地の地積が50アール(5,000㎡)以上(地域により異なる場合あり)にならなければならないという厳しい規定があるのです。

今回のご相談に係る農地の合計地積は30数アールで、一般的な基準は満たしていません。でも、耕作する意思のない息子さんが形骸的に相続するより、祖父が丹精込めて耕していた田畑を受け継いでいこうと思っているお孫さんが取得する方が、農地法の理念にかなうはずです。一縷の望みをもって、農業委員会に相談に行って来ました。返って来たのは、「基準の広さに満たない特定遺贈は認められない」という、個別の事情などいっさい斟酌しない回答でした。

お孫さんがこの農地を取得する方法は、祖父の相続により父親が取得したものを、更に相続するしかありません。祖父からの遺贈を認めても結果は同じなのに… 孫やひ孫といった直系の血族に対する特定遺贈に関しては、農地法の要件を緩和する特例を設けるなど、弾力的な運用がなされるようになることを願ってやみません。

 

2015年2月1日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : sasakihiroko