遺言はお元気なうちに

最近、遺言書作成の件で、ご高齢の相談者お二人とお会いする機会がありました。お二人とも、身近でお世話をされている方が、「何とか意思表示ができるうちに」と考えられたことが、相談をお受けする端緒でした。

実際にお目にかかってみると、少し会話がかみ合わないところがあったりして、周囲の方々が「今のうちに」と急がれたことがうなずける状態でしたが、お二人ともが、「それは、死ぬ間際に書くものやろ。自分はまだまだ元気だから、そんなものを書く必要はない。」と、そっくり同じようなことを言われました。

死を覚悟された方が、家族や友人に向けて、心情を書き遺す「遺書」と、遺産や血縁者の身分について、自分の死後に、希望どおりに実現されるよう最終的な意思表示をする「遺言書」。混同しがちですが、二つは全く違うものです。「遺書」は法的に有効かどうか問われることはありませんが、「遺言書」は遺言能力のある状態で作成され、民法に定められた要件を満たしていなければ、その役目を果たすことはできません。

先日、押印の代わりに花押(文書の末尾などに書く署名の一種)のある自筆証書遺言の有効性について争われている裁判で、最高裁が無効と判断し、有効性を認めた高裁に差し戻すという判決が下され、話題になりました。

公証役場で証人2名の立会の下、厳格な手続に則り作成される公正証書遺言ですら、その有効性を巡って訴訟に発展し、遺言能力が十分ではなかったとの理由で無効と判断されることが、少なからずあります。

「遺言書」は、是非とも、お元気なうちに、正しく作成して下さい。大切に思う方のために、せっかく作られた遺言書が、争いの火種とならないように。

 

2016年6月10日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : sasakihiroko