意外と身近な相続放棄

簡易裁判所における訴訟業務や成年後見業務など、司法書士の業務分野も、以前と比べると多岐にわたってきましたが、やっぱりメインは登記業務で、家事事件(家庭裁判所に提出する書類作成業務など)となると、受任する件数は年間数件程度しかありません。

その数少ない家事事件の中でも、この数年、毎年ご依頼いただいているのが相続放棄の申述書作成です。放棄の理由として、まず思い浮かぶのは、「財産より負債の方が多い」というものだと思います。もちろん、そういったご事情のケースもありますが、「心情的に何も貰いたくない」「ろくに音信もない兄弟姉妹の相続に関わり合いになりたくない」「帰ることもない田舎の土地を相続しても管理できない」などなど、理由は様々です。

相続人全員で行う遺産分割協議において、プラスの財産を何も相続しないことを、「放棄する」とおっしゃる方がおられますが、家庭裁判所に対して相続放棄の申述をしない限り、負債を放棄することはできません。遺産分割協議において、財産を取得する相続人が負債も引き継ぐと定めても、債権者の同意が得られない限り、各相続人は、法定相続分の割合に従って弁済する義務を負います。ご注意下さい。

もう一つ注意が必要なのは、相続放棄には期間があるということです。「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月の熟慮期間内に、相続の承認もしくは放棄をしなければならない」と、民法に定められています。期間の開始は、被相続人の死亡の時からではなく、自分が相続人となったことを知った時からです。例えば、亡くなった兄弟姉妹に配偶者や子供がいても、それら先順位の相続人全員が相続放棄をし、なおかつ、両親や祖父母といった直系尊属が生存していない場合は、ご自身が相続人となります。そして、3か月の熟慮期間は、先順位の相続人全員が相続放棄をしたことを知った時からスタートします。

普段は馴染みがないけれど、無縁ではないかもしれない相続放棄。手続については、身近な法律家 司法書士にご相談下さい。

 

2015年12月1日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : sasakihiroko